天使vs悪魔

 アメリカ映画によく天使が登場するのは、フランク・キャプラの「素晴らしき哉人生!」以来の伝統である。今ハリウッドを騒がしているホラーものにはアタシャ全然興味はないが、夢と希望のファンタジーものは大好きなので、この手のものは好んでよく観る。今回久しぶりの映画館に足を運んだのは、キアヌ・リーブス主演の『コンスタンティン』であった。

 この映画も今流行りのアメコミが原作らしい。原作の方は全然知らなかったが、今回の主人公は、この世とあの世を行き来するエクソシスト探偵、ジョン・コンスタンティン。彼は末期の肺ガンなのに、15分ごとにタバコをスパスパやってる自虐的なダークヒーローである。

 ある日、少女に取り憑いた悪霊と奮闘中、彼は嫌な異変を感じ取った。それは、天国と地獄のバランスが崩れ、地獄から抜け出た悪霊達が、LAの街を徘徊しているという不吉な予感だった・・。とまぁ、プレビュー風に書くとこうなるが、一般の人々にとってこの映画は、どこをどう観てもファンタジーどころの騒ぎじゃなく、ちょっと風変わりなホラー映画である。

 何故、ホラー嫌いのアタシが、この映画を観ているのかというと、それにはちゃんと理由がある。映画の冒頭、廃墟となった教会でアミーゴが拾った謎の剣、その名は「ロンギヌスの槍」。先ずこれが何だか分らないことには、この先2時間どうしようもない。

 「ン?どっかで聞いたことあるゾ? e〜と、そうだ、あの懐かしの屈折ロボットアニメ、『エヴァンゲリオン』だァ〜〜!!」と、思い出した人はエライ。そう言えば、あのアニメに登場する使徒と呼ばれていたモンスターは、全員天使の名前であった。

 ・・んナことは「コンスタンティン」とは全然関係がない。。とにかくこの映画、女刑事のアンジェラとその妹イザベル。このネーミングからはじまって、悪霊撃退用の秘密兵器まで、実にこと細かなディテールが、聖書をベースにつくられている。

 「エクソシスト」や「シャイニング」を観るのに、聖書を持ち出す必要などなかろうが、この「コンスタンティン」に関しては、聖書的な象徴が何の説明もなく、次々と登場するので、その辺りの最低限の知識がないことには、おそらくこの映画は全く???ではないかと思われる。
 
 映画のラストにルシファーという悪魔の親玉が、天井からヌゥ〜と白い背広を着て登場するのだが、聖書を知らない日本人にとっては、「何やこのいきなり出てきたセクハラオヤジみたいなオッサンは?」で終ってしまうのである。最近、割とこういった一般観客に不親切な映画が多い様だが、案外アタシはこういうの好きなのである。

 ここでキャスティングに関して一言。流れからすると、コンスタンティン役はどう考えても、ジョニー・ディップだが、何故か痩せ過ぎのキアヌ君(末期ガンの雰囲気はよく出ていた)。聖書的に推測すると、ルシファー役には、屈折気味のディカプリオ辺りが適任のような気もするが、これも何故か三流ナイトクラブの支配人

 特筆すベきは、ガブリエルという名の天使である。過去、ニコラス・ケイジや、ジョン・トラボルタが、ずうずうしくも天使役で映画に出ていたが、今回登場した天使が、アタシが知る限り、今まで見た天使の中で、一番天使っぽかったように思う。(見たんか?)

 背中にニュ〜と羽根が生えてると、「あ、天使だ!」と、誰もが認知出来るワケなのであるが、実は天使に羽根が生えているとは、聖書の何処にも書いてない。(だからアタシも羽根を付けていないのである。最もこの件に関しては、羽根を付けても、歳末大売出しの呼び込みになるだけだから、やめた方がいいと忠告されたという経緯がある。)

 ちなみに、天使や悪魔の存在を信じている人は、世の中にどれくらいいるのだろう?神様がいれば、その裏街道を行く悪魔もいて、神様のメッセンジャーである天使がいるのなら、悪魔の子分である悪霊もいるんだなぁ。と、考えた方が自然と思うのだが、世の中の人はそうは思わないらしい。

 さすがに最近は、「世の中ゼニやで、ゼニ!ゼニが全てなんやぁ〜!!」というような経済史上主義者はめっきり陰を潜め、人々はもっと崇高で精神的なものを求めている。従って神様の存在については特に異論はない。が、こと話が天使だ、やれ悪魔だということになって来ると、「アンタ、何ゆうてはんねん??」と、話は途端に荒唐無稽なお伽噺に突入しまうのである。

 「あ、ゴメ〜ん、待ったぁ? いや、もっと早く来たかったんだけどさ、ペルシャ天使に邪魔されて、21日も足止めくっちゃってさぁ、まいったのよホント。それで往生してたらミカエルが助けに来てくれてぇ、それで今やっと着いたとこ。ハイ、キミに神様から大切な伝言を預かって来たから、ちゃんと聞いといてネ!--(略)--さ、もう行かないと、ミカエルに叱られちゃうワ。あの、ペルシャ天使のヤツ、今度こそギャフンと言わしてやるから! そうそう、もうすぐギリシア天使が来るからさ、ヨロシク言っといて。あ”〜いそがし! じゃ、さいならゴメン!!」(ダニエル書10章12-20/エンジェル田中訳)

 唐突だが、これは「コンスタンティン」に登場した天使、ガブリエル(多分)の台詞である。この話から察すると、この場面で4人の天使がいることが分るが、ここで内容を説明している時間(画面)はないので、詳しいことを知りたい人は是非、聖書開いてみていただきたい。とにかく、こんな感じで聖書には神様の他にも、天使や悪魔も、フツ〜に登場するのである。

 ちなみに実際に天使も悪魔も見たことがあるという人が、アタシの周りには何人もいる。アタシ自身は、ほぼ感のいい方ではないので、残念ながら見たことはないが、悪霊の声はハッキリと聞いたことがある。いずれにせよ、彼等は実在しているのだから、それが見えちゃう人がいたって、全然不思議ではない。つまり、アタシにとってこの映画は、一種のセミドキュメンタリーみたいなものなのである。
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