好き邦題

 ハリソン・フォードが悪役をやってもやはり無理がある。チト古いが、ミシェル・ファイファーと競演した「ホワット・ライズ・ビニース」である。ヒッチコックがこの映画を観たら何て言うだろう? 「オレの苦労は何だったんだよぉ〜〜!!」と悔しがるか、それとも「CGなんぞ邪道ぢゃ!」と言って怒るかなぁ? などと、そんなことばかり考えながらDVDを観ていた。

 それにしても「ロード・トゥ・パーディション」だの、「コラテラル・ダメージ」だの、最近日本の洋画は、原題をそのままタイトルにしているケースが多い。しっかし、コラテラル・・なんてカタカナだけでよく意味が分かるよなぁ?? いや、たいしたもんだ。

 アタシはよくビデオ屋さんで、観たい映画を探すのに苦労することがある。つまり、日本語のタイトルだけを知っていて、原題を知らなかったりするからである。

 日本では古来より、大衆受けを狙った日本独特な洋画タイトルを付けるという伝統がある。デュビビエの望郷 (Pepe Le Moko)辺りから始って、慕情 (Love Is a Many Splendored Thing)、旅情 (Summertime)、明日に向って撃て(Butch Cassidy and the Sundance Kid)、死刑台のメロディ(Sacco & Vanzetti)等々・・

 あげたらキリがないが、映画産業が盛んだった頃、日本で公開された洋画は、原題とは全く意味が違う日本専用タイトルで呼ばれていたのである。

 しかし、良かったのはこの時期だけ・・とは言わないが、例えばミシェル・ファイファーを一つ例に取っても、私の大好きな「The Fabulous Baker Boys」は『恋のゆくえ』というワケの分からない邦題で、同じ監督の「Flesh and Bone」は『渇いた愛のゆくえ』と更に追い討ちをかけられている。

 更に「Married to the Mob」に至っては、『愛されちゃって、マフィア』という大胆なタイトル。これは「Die Hard」を『愛はカミサンを救う』、「Blade Runner」を『四杯のかけウドン』と名付けるくらいの逆インパクトがある。

 ちなみに「プライベートライアン」というスピルバーグの戦争映画があるが、この原題は「Saving Private Ryan」と言って、直訳すると「ライアン兵士の救出」。日本人にとって「ライアン」が人の名前であることは分かるだろうが、「Private」という単語から、兵士という意味を直ぐにピック出来る人は、あまりいないのではなかろうか? 従って、多くの日本人がこの映画を「私的なライアン」だと思っている。こんなことを心配しているのはアタシだけ?

 先日友人が「これ、いいんだよォ〜!」と言って、わざわざ郵送してくれたビデオが、チャン・ツィイーの走る姿がザートらしくも可愛い「The Road Home」という映画。この映画を日本の友人に説明するのに6分半もかかった。この映画の邦題が、『初恋のきた道』であったことがやっと判明した時、アタシは思わずサンタモニカの夕日に向かって走らざるを得なかった…。

 思い起こせば、シャーリー・マクレインの「The Turning Point」は『愛と喝采の日々』、「Terms of Endearment」は『愛と追憶の日々』、ロバート・レッドフォードの「Out of Africa」は『愛と哀しみの果て』で、リチャード・ギアの「Final Analysis」は『愛という名の疑惑』…。

 しかるに、日本人は日常生活において「恋」だの「愛」だのという言葉を使うことはほとんどない。福音が日本人の間に浸透し難いのは、この辺にも原因があるのではなかろうか。ウソだと思うなら、今日試しに家で誰でもいいから一人捕まえ、「愛してるよ・・」と相手の目を“じっと”見つめながら言ってみていただきたい。これで家族関係が回復されたら、みっけもんであるが、たいがいは即座に隔離されるか、病院に電話されるのがオチである。

 このように、日本で公開される洋画のタイトルに「愛」という言葉がやたらに乱用されているのは、求めつつも、うまく表現することが出来ない日本人のジレンマなのである。さて、それでは最後に、思わず「なんやそれ??」と思わずにはいられない妙〜な邦題を、蛇足ながら幾つかご紹介しておこう。

○ サボテン・ブラザース(Three Amigos!)
このタイトルにアタシは椅子からズリ落ちて腰を痛めたが、ストーリー展開と邦題のアホさ加減が妙にマッチした稀有な例。

○ニューヨーク東8番街の奇跡(Batteries Not Included)
確かにこのフレーズは日本にはないから仕方ないかも知れないが…長い!!

○ニューヨーク恋泥棒(The Linguini Incident)
デビッド・ボウイが出ているので仕方なく見たが、この題名はハッキリ言って恥ずかしい。。

○まぼろしの市街戦 (King of Hearts)  
これは実際、アタシがアメリカのビデオ屋さんで探すのに相当苦労した映画。

○愛の謝肉祭 (Oltre La Porta) 愛の嵐 (The Night Porter)
これはニ本ともイタリアの女流監督の作品。シリアスな佳作に邦題が思いっきり足を引っ張っている。しっかし・・謝肉祭なんて何処から持って来たん?

○いまを生きる (Dead Poets Society)
最後の三つはロビン・ウィリアムス主演の映画。詩的な原題がいきなり演歌になっている。

○奇蹟の輝き (What Dreams May Come)
この映画が日本でコケたのはこのタイトルが原因だと思う。ならばいっそ「死んだらびっくり! ロビン・ウィリアムスの大霊界」にすればよかったのだ。

○アンドリューNDR114 (Bicentennial Man)
いや、もう別に・・いいんだけどさぁ・・ 

ラストは逆バージョン、
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