ごすペルな人々

 アタシは音楽製作にかけては全くの門外漢である。従って、今回のコラムは、無責任な一大衆音楽ファンの個人的意見であって、決して批判ではないことを、最初にお断りしておく。

 此間、ウチの長老が金参千円の大枚をはたいて、日本のゴスペルCDを買ってきてくれた。「おぉ!最近日本のクリスチャンも、だいぶエスタブリッシュされつつあるからのぉ〜」と、期待に胸をふくらませながら、早速CDをかけてみた。

 先ず一曲目は、日本のリバイバルをテーマにしたファイト一発リポビタン風ナンバー。勇ましく鳴り響く「リィばぁィバぁ〜〜ル!!!」の歌声。それはまさにNHK制作版・仮面ライダーのテーマソングのノリであった。エンディングも華々しく、“ダダぁ〜ン、チゃちゃちゃchaっ!!” と、昭和30年代を髣髴とさせるレトロな三本締めアレンジで決め!「す、すんげぇ〜〜」これがアタシの正直な感想であった。

 …思えば、何故にアタシが、教会に通い出してから洗礼を受けるまで、十年間という、イスラエルの民が流浪した4分の一にも相当する時間を、費やさねばならんかったのか?「そりゃアンタがアホで頑固だったからじゃないの。」と言われてしまえばそれまでだが、アタシにも少し言わせてくれ。

 正直アタシは教会で賛美することが苦痛だった。“心にもない賛美は神様に対して失礼でねーだろうか?”と考えたアタシは、いつもうつむきシラケ加減で最後席に座っていた。

 「オレがクリスチャンになりたくない理由はさぁ、キミタチ・クリスチャンがやってることって、何か知らんけど平面的でワンパターンなのよ。クリスチャンじゃないヤツの方が、よっぽど個性的でアトラクティブじゃん。ところが何よこれ!? 今時の高校生だって、もっとマシなものつくるって。とにかく、オレはこんなダッサイ宗教色に染められるなんて、まっぴらゴメンよ!!

 …実にイヤなヤツであるが、こう偉そうにのたまわっていたのは、他の誰でもない、洗礼を受ける前のアタシであった。当時、映像制作を生業としていたアタシにとって、クリスチャン印が付いてる音楽や映像が、おっそろしく前近代的なものに感じられていたのである。それがアタシが入信を拒んでいた理由の一つであったことに、このCDを聞いていて今更ながら気が付いた。

 そりゃ確かに福音は時代を超越しとるからのぉ…ゴスペルも時代の流れと関係なくてもいいんだよなぁ…と、悟りなのか諦めなのかよく分からない思いを胸に抱きつつ、過ぎていった三十代のゴスペル生活(?)。

 しかし、アタシの恩師の一人である岸先生が、「ゴスペル・ミュージシャンを志すなら、聖書を読む時間を割いてでも練習せにゃ!」と、事あるごとに言っていたが、実に同感である。(注:実はココだけの話だが、本当は「読む時間を割いてでも」じゃなくて、「読むヒマがあったら」と言われのである。それをそのまま引用すると、またしても狭い業界に波乱を起こしかねないので、不本意ながらソフトな言い方に変えておく。)

 何故なら、教会というところは、ピアノやギターがチョットでも弾けると、「あんらぁ〜! OOさんスゴぉ〜イ! 今度是非賛美リーダやってぇ!!!」と、善良なる人々から拍手喝さいを浴び、ついついそれに乗せられてしまうという体質が根強く残っているからである。

 であるからにして、なまじっか音楽をかじったことのある人達は、それに乗せられないよう、十分気を付けなければならない。我々クリスチャンがダサイと、Jesusまでがダサイと思われてしまうからである。

 思い入れタップリな分、あまりに稚拙なニワカ・ゴスペル・ミュージシャン。こういうのが一番タチが悪い。神様を知らないプロの歌と、神様を愛してやまない音痴の歌と、そのどちらを神様が喜ぶかは、言うまでもない。しかし、特に練習しなくたって、気持ちさえあれば大丈夫、後は聖霊様が助けてくださるから。と言うのは大間違いである。

 巷には、夢みたいなことばかり言って、地に足がついていないクリスチャンが多すぎる。“社会的基盤のなさは、信仰的基盤のなさと比例する”と言いたくなるほど、人間的成長に対する努力のなおざりが、霊的成長を阻んでいるということに、多くのクリスチャンが気付いていない。

 人は、自分の分は、自分の分として、力を尽くさねばならない。練習もしないで人々に感動を与えられるほど、福音の世界は甘くはない。要するに、“霊的成長とは全人格的なものである”ということを言いたいのであるが、これ以上説明していると、説教コーナーになってしまうので、もうこの辺にしておく。

 最初のCDに話しを戻すが、実はこのCD、日本のクリスチャンの間では、かなり有名な人達ばかりが参加していたオムニバス盤であった。つまり、彼らはプロなのであるから、これをどう受け取るかは感覚の問題ということになる。いや、かえって日本人の基本的嗜好性は、NHK朝の連ドラなのだから、そう言った意味では適しているのかも知れない。それを、はなはだ心もとなく感じているのはアタシだけ?
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