大魔神伝説

 先日、前々から気になっていた『大魔神DVD Set』を遂に買ってしまった。買ってしまったと言う意味は、今までBeta-VHS-LDという、空しい変遷を繰り返し、家電メーカーの操られるままに翻弄されてきたアタシにとって、また性懲りもなくDVD(しかもリージョンコード付き)を買うということは、それなりの悟りと決断が必要だったからである。

 衝動買いの原因は先ず、ジャケットデザイン。日本アニメや怪獣映画のアメリカ仕様は、何故かおっそろしくダサイデザインにわざわざ書き換えられてしまうのが常なのであるが、(宮崎シリーズは何故か日本版の方がダサイ)この大魔神だけは、ジャケットがとってもクールなのであった。しかも3枚セットで25ドルという超嬉しい値段。ちなみに日本版は1万5千円也・・これでは買うしかないではないか。

 ゴジラが黒澤なら、大魔神は成瀬みたいなもので、知る人ぞ知るというマニアックな感覚が心地よい。時代劇でもなければ、怪獣映画でもなく、そう、大魔神は日本映画界における幻のワン・アンド・オンリーな存在なのである。この映画は東映のゴジラに対抗して、ガメラをつくった大映が、1966年の1年間に一挙に3本公開し、その後にも先にもコレッキリという不思議な映画なのだ。

 舞台は(多分)江戸時代。大魔神とは、代々の昔から村人に崇め奉つられている村の守護神である。その村に悪〜い殿様が登場して、村人を虐待し始める、最後にはレジスタンス正規軍も捕まり、「あ”〜全員殺されちまう〜!!」といったところで、村人達の切なる祈りに答え、大魔神が遂に登場!!という、シンプル且つ正統的パターン。

 普段はとても優しい顔をしているのだが、怒ると緒方拳とハルクを足して二で割ったような青鬼の顔に変身する。そしてこれがまた、ちょうど動き回られると怖〜いくらいの大きさなのだ。どす赤く不気味な色に染まった空をバックに、大魔神がドシンドシンと悪者に迫り、ぎぃ〜と睨み付ける。彼を一度怒らせたら、そう簡単には止められないのである。

 今を去ること40年前、CGも何もない時代のレトロな手作り特写が感動を呼ぶ。その意味でアタシはスパイダーマンより、断然大魔神の方を評価する。さすが60年代だけあって、時代劇のセットもチャッチクなく、時代劇特有のセリフ回しも今の役者とは比べられないぐらいちゃんとしている。

 聞くところによると1930年代、デュビビエが監督した「巨人ゴーレム」(北欧に伝わる偶像に悪霊が宿るというユダヤ人伝説)がその原型らしいのだが(アタシャ観てないけど)、いずれにせよ、大魔神は日本でしかつくれない特写映画であることは確かなのである。

 ところで、その特写もさることながら、それ以上に時代を感じさせられたのは、そのストーリ展開であった。例えば第2作目に、小学生くらいの子供達4人組みが旅をするシーンがあるのだが、その旅の途中、一人の子供が他の仲間のために、自分の身を犠牲にして死んでいくというシーンがある。

 キミはキミ、ボクはボク。幼稚園児でさえ、個人主義が徹底しているこの現代日本にあって、このようなストーリー展開は、もはや全く理解されない可能性がある。「え、何で死んじゃうのぉ?」 みたいな・・。おそらく子供達が受ける感覚としては、コンピューターゲームとブリキのオモチャぐらいの差がありそうである。

 しかし、、である。アタシは本来日本人は、犠牲精神に非常に富んだ国民ではないかと、密かに信じているのである。宮崎アニメが何故にこんなにウケルのか。それはナウシカ、アシタカ、千尋、そしてハウル・・・と、パターンは違えど、自分の身を犠牲にして、人のために生きるという潔い精神が、世代を越えて日本人の感動を呼び起こすからではなかろうか。

 大衆という人種は、どこの国であろうが、無責任、無秩序という点において同じである。が、問題は一握りのリーダー達の人間性によって、一つの国の将来が決定してしまうということだ。日本は知らない間に、サムライは消え去り、借金を抱えた大黒屋ばかりとなり、子供達の模範となるべき父親の権威も、海の底まで失墜してしまった。もはや、今の日本を救うため、最後は大魔神に登場してもらうしかないのである。
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